わが北鎌尾根、剱岳よ おちこちの山   楽山社

(若干の資料)

  V 五九峰の標高が伸びる  新地形図(二万五千分の一)
    
 地図上で、山の標高がぐーんと伸びました。戦前の陸地測量部(陸軍参謀本部)作製五
万分の一の地形図にかわって、建設省国土地理院による二万五千分の一地形図が、ほぼ完
成しました。“ほぼ”というのは、四千四百三十面目の「魚釣島」(尖閣列島)が平成元
年に完成し、残るは竹島と北方領土だけという次第なのです。
 さて新地形図は、五万分の一よりも距離で二倍、面積で四倍に拡大されました。この作
業とあわせて、国土地理院では、全国の標高二、五○○メートル以上の二二七峰を点検し
ました。すると、なんと五九峰がこれまでの標高より“かなり高い”ことが判明したので
す。
 これは「国が公表している山の高さの表示は実際より低い例が多い、修正すべきだ」と
いう山岳宗徒の声が、やっと生かされたからです。いままでの地形図の大半の山の頂上に
は、三角点を示す △ 印がついた標高が記されていました。各種の地図や、登山案内書、
教科書にも、この標高がその山の高さ、と転記されていました。
だがこれはまちがいで、三角点は頂上に置かれているとは限らず、測量作業のしやすい、
別の低い場所にある例も多いのです。北アルプスの雄山(立山連峰)や、浅間山、尾瀬の
燧ヶ岳などなどです。
 かくして測り直した結果、五九峰の標高が、地図の上でぐーんと伸びたわけです。
 高さ・ベストテンの中では、穂高連峰の中で涸沢岳(北ア)が七メートルアップして北
穂高岳との八・九位の順位が入れ替わりました。
 一番伸びたのは浅間山で二四九三・三メートルから七五メートルのびて二五六八メート
ルへ。南アルプス・鳳凰三山のひとつ、地蔵岳は二四メートルのびて二七六四メートルと
なり、順位も八三位から七七位へ躍進。
 東北一の高さを誇ってきた燧ヶ岳の頂上は二峰あり、ずうっと俎嵒に三角点がおかれ
標高二三四六メートルとされてきましたが、西方にある柴安嵒のほうが一○メートル高い
ことがわかり、「ニイサンヨロシク、からニイサンゴクロウ」にごろ合わせを変える必要
が生じました。鳥海山(山形)も六メートル高い二二三六メートルへ。
 九州本島では、九州一が九重山の大船山(一七八七メートル)から四メートル高い九重
山・中岳(一七九一)へ。福岡県では九○年間、最高峰といわれてきた御前岳(一二○九
メートル)が、二一メートル高い釈迦岳(一二三○メートル)に王座を明けわたしました。
 日本では過去、三角測量は山の高さを測るのが目的ではない、という考え方でした。そ
のため浅間山などは、理科年表、百科事典、教科書など、標高がまちまちで、各方面から
苦情がよせられていたものです。国土地理院では今後、中級山岳から低山へと標高見直し
作業を進めていきます。


  ▼日本の山の高さベスト10

 @富士山          3776m   E東岳(悪沢岳) (南ア)   3141m
 A北岳    (南ア)   3192m   F赤石岳     (南ア)   3120m
 B奥穂高岳  (北ア)   3190m   G涸沢岳     (北ア)   3110m
 C間ノ岳   (南ア)   3189m   H北穂高岳    (北ア)   3106m
 D槍ヶ岳   (北ア)   3180m   I大喰岳     (北ア)   3101m